2025年3月21日(金)「しんぶん赤旗」より
多くの大学関係者の反対を押し切って2023年12月に強行された国立大学法人法改悪(24年10月施行)によって東大など大規模国立大5法人に設置が義務づけられた運営方針会議の委員に、大企業経営者や財界人が多数就任していることが分かりました。大企業経営者が大学内で強力な権限を持つことで、政府・財界の大学支配が進むうえ、同会議が利益相反(企業出身委員が大学の利益より自社の利益を優先すること)の温床になるとの懸念の声も出ています。(佐久間亮)
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運営方針会議は予算や決算、中期目標・中期計画といった大学の重要事項を議決し、執行を監督します。いわば大学の最高意思決定機関です。同会議の設置は、大学ファンドから支援を受ける国際卓越研究大学の認定要件にもなっています。
卓越大1号となった東北大では、トヨタ自動車など大企業8社が出資する半導体企業ラピダスの東哲郎会長が運営方針会議の議長に就任。昨年11月に開かれた同会議の議事要録(発言者名なし)には「半導体やエネルギー、防災など社会の大きな課題の解決に向けて積極的に貢献いただきたい」という発言が記載されています。本紙は同大に発言者を尋ねましたが、現在まで回答はありません。
名古屋大と岐阜大で構成する東海国立大学機構では、愛知県豊田市に本社を置くトヨタ自動車の内山田竹志元会長(現同社エグゼクティブフェロー、元経団連副会長)が運営方針会議議長に就いたほか、トヨタ学園監事やトヨタグループの自動車部品メーカー・アイシンの取締役を務める浜田道代氏が委員に就任。同機構は本紙の取材に「利害関係を有する場合やその恐れがある場合には、当該委員には議事に加わっていただかない」としています。
しかし、名古屋大はトヨタ自動車はじめトヨタグループ企業と五つの「産学共同研究部門」を立ち上げています。運営方針会議が議決する予算や中期計画は共同研究を実施する学部や研究者の予算や処遇にも影響を与えるため、同会議の審議全般が利害関係に当たる可能性があります。
京大の運営方針会議議長は、日本最大の軍事企業・三菱重工業取締役の平野信行氏(元経団連副会長)です。
5法人の運営方針会議構成員52人のうち企業出身者は19人。占有率は2~4割です。そのなかには経団連副会長、元同副会長が各2人、元経済同友会副代表幹事、中部経済連合会副会長、関西経済連合会副会長、元関西経済同友会常任幹事各1人が含まれます。