■2003年3月議会報告

  狭山中学校用地購入に関する調査報告

                 ―2600万円過払い金問題―(平成153月定例会)

                          編集・発行:狭山中学校用地購入に関する調査特別委員会

平成十四年第三回定例会の個人質問において、大阪狭山市立狭山中学校の用地購入に際して、二千六百万円もの過払いのあることが判明しました。

 その後の委員会の審議においても、境界の立会いもせず買収したことや、過払いを知ると同時に直ちにその事実を明らかにすべきところ、何ら報告すらされず、九月議会においては虚偽内容の決算が報告されるとともに、過払い金の返還もなされていないなど、購入に至る経緯や過払い判明後の関係者の対応など、多くの疑問点が明確に解明されませんでした。 このことから、事の真相を明らかにし誤りを二度と起こさない防止策を確立するために、地方自治法第百条に基づき、調査特別委員会を設置したもので、その調査結果を報告します。

事実調査報告

本委員会に付託された調査事項は、大阪狭山市立狭山中学校用地購入に関する事務について、

 (一)土地購入に係る経緯 ()土地購入に係る手続の適否 ()土地購入に係る価格の適否 ()過払い判明後の行政事務の適否、であり、これに関する調査として、大阪狭山市並びに大阪狭山市土地開発公社から必要な関係書類の提出を受けるとともに、証人として井上 武市長、小林定信助役(開発公社理事長)、澤田宗和教育長、杉本勝彦市理事(開発公社専務理事)、桜渕 実総務部長(前都市整備部長・前用地対策室長)、林部喜信都市整備部長(用地対策室長)、谷口洋一郎前開発公社事務局長、中田捷三開発公社事務局長、松本善造用地対策室次長、神倉 彰前用地対策室次長、山崎 貢学校教育部長、用地対策室嘱託員の各尋問を行い、開発公社嘱託員の参考人尋問も実施した。

 また、関係する地権者二名、市の顧問弁護士、開発公社より依頼されて不動産鑑定評価を行った不動産鑑定事務所二社、過払い判明後に現地測量を行った測量事務所へそれぞれ照会するとともに、利害関係のない不動産鑑定士に土地購入価格の適否に関する鑑定意見も求めま した。以上の調査の結果、これまでに明らかになった事実は次の通りです。

(一)土地購入に係る経緯

 狭山中学校敷地と接する大阪狭山市狭山四丁目所在の問題の土地(以下、本件土地という)とその東側に隣接する四筆の土地(以下、本件隣接土地という)については、各々の地権者からそれぞれ別個に井上市長に対し、本件隣接土地所有者、本件土地所有者の順で平成十三年六月中旬頃に相前後して市で購入しないかとの申し入れがあり、市長より同年六月二十日に澤田教育長に対し、狭山中学校用地として本件土地及び本件隣接土地が必要かを検討するようにとの指示がなされた。

 地権者両名いずれからの購入打診の際にも井上市長は第三者を一切立ち会わせていない。

 澤田教育長は、市長の指示を受けた翌日に教育委員会事務局の学校教育部長、教育総務課長(学校教育部次長)、学校教育課長を集めて協議し、狭山中学校の用地として本件土地及び本件隣接土地の購入は必要であるとの結論を出し、その旨を同年六月二十二日に市長に報告した。

 教育長に対する事務委任規則では、一件三十万円を超える教育財産の取得につき市長に申し出ることが教育委員会から教育長へ委任される教育事務から除外されているにもかかわらず、澤田教育長が本件土地及び本件隣接土地購入の必要性につき市長に報告するに先立ち教育委員会を招集しての審議はなされていない。

 本件土地については平成十四年一月十日に、本件隣接土地については本件土地に関する売買代金の過払いが判明した後の平成十四年四月十五日に、売買契約がそれぞれ締結されている。また、この四月十五日には本件隣接土地上の物件移転補償を開発公社が本件隣接土地所有者へ支払う契約も同時になされている。

(二)土地購入に係る手続の適否 

本件土地と本件隣接土地の購入の時期は年度をまたがっており、先行する本件土地の購入につき地権者との交渉は、当時の都市整備部長である桜渕氏が専ら担当し、本件隣接土地の購入については同じく当時の用地対策室次長である神倉氏及び用地対策室嘱託員が担当した。

 本件土地買収の交渉については、平成十四年一月十日の土地売買契約書締結の際に神倉氏、用地対策室嘱託員が立ち会ったことはあるものの、それ以外は桜渕氏が専ら単独でこれにあたり、同じ用地対策室に執務している他の誰も交渉経緯などの詳細を知らされていなかった。

 本件土地購入に際して、購入価格を決定するにつき市から本件土地所有者に対し本件隣接地との境界確認済みであることが明記され、かつ実測面積が明らかとなる図面の提供は求められていない。もっとも、参考となる図面はないかとの問い合わせは市からなされて、本件土地所有者より、本件土地を相続により取得する以前の平成七年に本件土地や本件隣接土地の北側に隣接する土地をテニスコート用地として市が地権者両名の先代から買収する際に作成された丈量図に、本件土地の実測面積らしきものが手書きされた図面が平成十三年十一月下旬に市へ送付されている。

  しかし、この図面に関し本件隣接土地との境界確認がなされているかや、実測面積と一致しているかの確認は何らなされておらず、本件隣接土地との立会済み境界を明らかにする図面などの資料の提出を市が本件土地所有者にはもちろん本件隣接土地所有者にも求めないまま、平成十三年十二月三日に開発公社より不動産鑑定事務所に本件土地の適正購入価格に関する鑑定依頼がなされている。

 不動産鑑定事務所は、一週間後の同年十二月十日付で本件土地の更地価格につき鑑定評価書を作成し、桜渕氏が本件土地所有者と交渉の結果、同月二十六日には鑑定評価通りの一平方メートル当たりの価格で購入する合意が成立し、実測面積を六百七十八・四二平方メートルとする数量指示売買として前記のように翌平成十四年一月十日に土地売買契約締結に至っている。

  なお、前記鑑定評価に際し当時、開発公社事務局長であった谷口氏は、本件土地と本件隣接土地との境界付近と思われるところに杭があることを現地で確認しているものの、その杭の位置と本件土地所有者から送られた前記図面や、その元になったと考えられる市が保管している前記丈量図に記載されている境界標の位置との照合は行っていない。

(三)土地購入に係る価格の適否

  本件土地については、適正買収価格決定の参考とするためになされた前記の不動産鑑定事務所による鑑定評価は、登記簿上の公簿面積である五百十九平方メートルを前提としてなされたものである。

 前記のように本件土地の買収価格は、鑑定評価で適正な更地価格とされた金額で、実測面積を六百七十八・四二平方メートルとして算定されたものであるところ、地権者らにおいて、平成十年一月六日に本件土地と本件隣接土地との境界確認がなされており、それを基に過払いに気付いた後の平成十四年四月十二日に実施した測量により本件土地の実測面積が五百三・六四平方メートルにすぎないことが明らかとなった。

 このことに関し、裁判所の鑑定経験を有する利害関係のない不動産鑑定士に対し、本件土地の一平方メートルあたりの前記鑑定価格を変更する必要性が生じるか意見を求めた結果、鑑定評価の前提とされた本件土地の形状や規模の変更により価格算定に影響は生じないとのことであった。

 なお、本件隣接土地についても開発公社の依頼で平成十四年三月二十八日に本件土地についてと同じ不動産鑑定事務所により、一平方メートルあたり本件土地よりも三千円低い金額を適正価格とする鑑定意見が出され、さらに、本件隣接土地上に存する建物等の物件移転補償についても、別の不動産鑑定事務所による鑑定評価がなされている。

(四)過払い判明後の行政事務の適否

本件土地所有者との土地売買契約で購入した土地に、本件隣接土地の一部が含まれており、本件土地の実測面積が六百七十八・四二平方メートルではないことが、本件隣接土地所有者より平成十四年二月十二日に本件土地と本件隣接土地の前記境界確認書や丈量図を提供されて初めて桜渕氏らは知るに至った。その旨を本件土地所有者に連絡して過払い金が生じていることを伝え、電話で返還交渉を行うようになったものの、桜渕氏は平成十四年四月の人事異動で自らが総務部長に転出した後も、後任の都市整備部長である林部氏に直ちに右過払いの事実を告げず、同年五月中旬になってようやく林部氏に告げたが、自ら責任をもって対処すると説明し、開発公社理事長である小林助役には一切報告しなかった。

 林部氏もまた助役へ過払いの事実を一切報告していない。

 用地対策室の神倉氏、嘱託員は桜渕氏とほぼ同時に、松本氏も平成十四年四月初めには過払いの事実を知ったが、助役や市長へはもちろん、同年四月に用地対策室長に就任した直属上司である林部氏へもそのことを全く報告していない。

  なお、小林助役が過払いの事実を知った日時につき、助役本人の説明は二転三転しており、平成十四年九月十一日の議会での答弁では当初から、すなわち同年二月十二日の問題発覚直後からというものであったのを書面をもって平成十四年六月二十日に知るに至ったと訂正し、同年十月十六日の本委員会においてさらに同年八月三十日に初めて知るに至ったと再度訂正している。

 桜渕氏も平成十四年九月十八日の総務文教常任委員会では、小林助役から提出された前記書面の内容に沿う形で同年六月二十日頃に過払いの事実を報告したとしながら、その後、本委員会でこれを八月三十日であったと訂正している。

 小林助役、桜渕氏両名ともこの過払いについての報告の日時が平成十四年八月三十日であったとの明確な記憶がありながら、議会や総務文教常任委員会ではそれに反する答弁を行ったことを認めている。

 本件土地所有者への過払い金返還交渉に関しては、桜渕氏を通じて本件土地所有者から依頼を受けた測量事務所により平成十四年四月十二日に本件土地の測量がなされて、過払い金が百七十三・七八平方メートル分で二千六百二十四万七百八十円であることが明らかになったが、この測量費用は本件土地所有者が測量事務所へ支払っている。

 過払い判明後の本件土地所有者への返還交渉は、電話でのみなされてきたが、平成十四年九月一日になってはじめて、助役の指示を受けた桜渕氏が市の顧問弁護士に過払いに至る経緯などを説明して、過払い金の返還につきどのような対応を取るべきかの法律相談を受け、顧問弁護士の指示に基づき本件土地所有者より過払い金に利息を付して同年末までに返還する旨の同月六日付確約書を得るに至った。

 過払い金二千六百二十四万七百八十円は、同年十月二十一日に開発公社借入金利相当の利息二十六万九千五百十一円とともに、本件土地所有者より返還されている。

  本件土地に関する過払いの事実は、小林助役がそれを知ったとされる平成十四年八月三十日の直後の同年九月二日に開かれた議会にも一切報告されず、議会での議員からの質問により初めてこの問題が明らかになった。

 平成十四年五月になされた開発公社決算にも、過払いの事実は全く記載されておらず、この決算は承認されて議会にも報告されている。また、開発公社理事でもある桜渕氏、林部氏らを含むいかなる関係者からも過払いの事実を決算に反映させるための何らかの具体的な行動も全くとられていない。

以上が調査によって判明した事実の概要であるが、これに基づき委員会で慎重に審議を重ねた結果、各委員から出された意見を総合し、概ね次のような本委員会としての判断に至りました。

     委員会意見

(一)土地購入に係る経緯

本件土地所有者からの回答や井上市長の証言によれば、少なくとも本件土地につき当時民間業者から売却するようにとの引き合いがあり、本件土地所有者に売却を急ぐ事情があったことがうかがわれるものの、地権者らからの購入打診の申し入れがなされて後、井上市長と澤田教育長の他は少数の者しか関与しないまま教育委員会にも諮らずに、わずか数日で購入の必要性ありとの結論に至っている点は、狭山中学校用地について中学校そのものの移転も含めて多様な意見が存する状況にあるにもかかわらず、中学校用地として本件土地及び本件隣接土地購入の必要性ありという政策決定が事実上既定路線であるかの如くになされているのではないかとの感が拭えず、行政事務遂行としてやや拙速ではないかとの指摘があった。

 この点は、本件土地に関し重複購入により過払いを発生させるという前記のずさんな購入手続を直接招来したものではないものの、その背景となる事情として指摘されるべきである、との意見が本委員会の大勢を占めた。

 本件に限らず、公共用地としての地権者からの不動産購入の申し入れについては、今後は、市側は複数の関係者がその申し入れに必ず立会うようにして、申し入れやその経緯の透明性を確保するようなシステムを構築することが強く望まれる。

(二)土地購入に係る手続の適否

 本件土地の買収につき、本来なされるべき隣接土地との境界確認や実測面積を明らかにするための測量が全くなされていないことはまず厳しく指摘されるべきである。

 境界確定と実測面積の確認という土地買収において、最も基本的な手続を怠った担当者である桜渕氏は、用地対策室長という責任者としての地位にありながら目に余る職務怠慢と言わざるを得ず、この点だけでも優に懲戒処分に値するものである。

 加えて、本件土地と本件隣接土地の購入は、同じ用地対策室に勤務する桜渕氏、神倉氏、用地対策室嘱託員らによってなされたにもかかわらず、それぞれ別個独立にほとんど相互連携なく進行し、本件土地につき境界確認や実測面積を明らかにするための測量など必要な手続きがなされないまま桜渕氏が単独で進めている買収交渉を適切にチェックして是正し得る体制がとられていなかった。

 買収交渉には必ず複数の担当者であたるというかつてから約束されていた当然なすべきことが用地対策室長という責任者自身によっていとも簡単に全く無視されていることこそが、本件で最も本質的な問題であるというのが本委員会の結論である。

 本件土地についての開発公社から不動産鑑定事務所への鑑定評価依頼に際しても、折角現地見分を行いながら、現地に存する杭や境界標と図面との照合を怠るなど、桜渕氏のみならず谷口氏を含む関係する担当者に本来なすべき手続を省略するという著しい職務怠慢があるのは明白である。これらの点は本委員会の委員全員が一致して認めるところである。

 このような買収に関する当然履践すべきことがなされていない現状の抜本的な改善のため、具体的かつ迅速な再発防止措置の検討と実施を強く求めるものである。

(三)土地購入に係る価格の適否

購入価格については、実測面積が公簿面積をわずかに下回るのみで、開発公社から依頼された不動産鑑定事務所が前提としたものと形状もあまり異ならないこと等から、結果的に当初の鑑定評価額は不適切なものではなかったと評価できるであろう。

  ただ、委員会では、本件土地と本件隣接土地との買収が年度を異にしたことから、本件隣接土地所有者の方がやや早くに購入申し入れをしているにもかかわらず、買収価格が本件隣接土地は本件土地より一平方メートル当たり四千円安く、地権者側からの購入申し入れであり、本来なら更地として購入してもおかしくないにもかかわらず、本件隣接土地上の物件移転補償がなされたことは、買収価格に差が生じることの地権者への埋め合わせとしての意味もあったのではないか、との疑義があるとの意見が出された。

(四)過払い判明後の行政事務の適否

 小林助役や桜渕氏などの証言を前提とする限り、桜渕氏が過払いの事実を知った平成十四年二月十二日から、その報告が助役になされたとされる同年八月三十日まで実に半年以上経過している。

 また、後任の都市整備部長である林部氏も同年五月中旬に過払いの事実を聞かされながら開発公社理事長でもある小林助役に一切報告をしていない。

 その結果、過払いの事実が開発公社決算書に全く記載されないまま、その内容虚偽の決算書が開発公社理事会での承認を受け、議会でも報告されるという極めて重大な事態を招来するに至っている。

 この点に関する桜渕氏、林部氏の不作為による職務怠慢は、地方公務員法二十九条一項二号の懲戒事由に該当するもので、その責任は非常に大きいと言わざるを得ない。

 また、過払いの発生を半年以上も把握できず、その結果として開発公社決算書が虚偽内容のものとなるのを防止できなかった開発公社理事長たる小林助役の監督義務懈怠が著しいことも異論はない。

 小林助役が、平成十四年八月三十日に過払いの事実につき報告を受けながら、直後の議会にこれを報告させようともしなかったのは、問題の隠蔽を図ったと言われても弁明の余地はないと思われる。

 さらに、過払いの事実を知った時期につき議会で故意に虚偽の答弁をするなど小林助役の本件に関する一連の対応は議会軽視も甚だしいと言わざるを得ない。

  過払いの事実発生を順次知った神倉氏ら用地対策室のメンバーも、助役などの上司に報告するといった行動を一切とっておらず、また、平成十四年四月の人事異動で都市整備部長になった林部氏に、前任者の桜渕氏から速やかな事務引継がなされず、同年五月中旬に過払いの事実を知ったのちも、林部氏が漫然とその対処を桜渕氏に任せて放置するなど、本件の一連の処理経過を見る限り、適正な行政事務の遂行とその透明性の確保という機能が完全に麻痺していると断定せざるを得ないということは、本委員会の委員全員の共通認識である。

  また、過払い金返還交渉で、開発公社へ返還されるべき過払い金に利息を付するのはともかく、その金額確定のための測量事務所による測量費用を本件土地所有者に負担させている点は、本件土地所有者が実測面積での購入を当初から求めていたにもかかわらず、市側があえて測量をしないまま買収したことに照らすと、果たして処理として適切と言えるのかとの指摘も本委員会においてなされた。

  加えて、平成十四年九月の議会で本件過払いの事実が指摘されたにもかかわらず、助役以下に対し事実関係を詳細かつ正確に把握して速やかに報告せよとか過払い金の返還につきどのような対応をとりいかなる状況になっているか逐次詳しく報告せよとか求めるなどの適切な指導・監督が井上市長からなされたとは必ずしも言い難く、その緩慢とも言える対応は、本件事案の解明と再発防止の為に本委員会を設置するに至る一因となり、また、本委員会設置後も事実関係につき助役の証言が前記の通り不自然に変遷しているにもかかわらず、これにつき何らの対処が井上市長からなされていないことが本件事案の解明に時間と労力を要することになったことも指摘しておくべきである。

  今後本件のような不祥事の再発を防止するためには、違法あるいは不適切な行政事務に対する職員からの内部告発を含む適切な報告対処を促すような何らかの機構を設置するなどによる行政事務の適正さと透明性の確保が望まれるところである。 

 

 

 

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